parole Jouet

見たり聴いたり、嫌だったり素敵だったりな小品文

強欲

てふてふという文字のままの似合う蝶が、菜の花と間違えるような振る舞いをする頃、身体を守るか、春を装うか、そんなことばかり朝には悩みます。冷たい風に吹かれても、雨が花を濡らしにきても、電車を降りて家までの道を歩き始める頃にはよく晴れている日々です。さして建物は高くもなく、一番に強い光が車のライトだという程度の街ですが、道の途中で、空が一番にひらける場所があります。そこで私は、寒い時には暖かさを、暑い時には涼しさを感じます。空を見遣ると、月があり、私は足取りをつい軽くしてみたくなります。本当は、月の周りで星がどうしているか眺めていたいのですが、つい気持ちを軽くして、その場所を突き抜けてしまいます。そこを歩くときの私はとてもしなやかだと、自分で言うのもなんですが、そう思うのです。気持ちも身体も、自分の一番気に入っている自分になるのです。とても良い気持ちで、誰かに伝えたくなるのですが、誰か、などということはなく、やはりあなたに伝えたくなります。こんなお話をしても、あなたに何かを与えることができたり、あなたの何かを育むものではないのですが、ただあなたに聞いてほしいと、その気持ちごとお伝えしたくなります。