parole Jouet

見たり聴いたり、嫌だったり素敵だったりな小品文

寒声

可哀想な誰かの声が、とても甘く、感覚に気持ち良く見出されることの不思議。

霜花を手に移して寒い寒いと言ってるだけで過ごされない。

遠い薄氷は雪をまだ見ていないのを重大に思わせる。

遥か今年の彼方、かじけることに自然な感情を押し込み思わしいとしていたけれど、やはりそれは正しかった。

いさくさの甘たるくいじらしいのにてんで懲りずに、好きだと思えば嫌いに思え、嫌いに思えば物足りなく飽き足らず、少し我慢の知ること望み、素直な本能が美しさだと主張したがり。

雪の降れば美しさを増すように感じる身体、大層な思い込みのある気色に銀の跳ね返り、けれど盲目の人のきちんと騙されてくれること、事ぞも無しに。

耐えるより先に言葉にされたいモノ、甘ければ甘いほど取り繕うのを見たいモノ、わたしあなたがすきだもの、けれど寄り添いはもっと微妙で細やかに行われたいの。

純文学に得た知識は慢ずるようでなしに蓄積されたいもの、あなたが一生このフレーズに出会わなければ幸いだもの。

 

観察眼に見舞われて、そうして私が美しくなるのを望まれたい。

たいしたことをなさないことが、随分な打撃になるでしょう? そう言って笑う、表情の強さを得られたい。

小さなことの積み重なりで、誰彼を構い摘まれぬほどに根をはれば、その根を抜くのはあなたの一存か、私の自ら枯らすのを戸惑わぬ満足か。