強欲
うっぷん
温泉
三連休。私は温泉に訪れました。
ひどく寒い季節、雪の道にややもすると一生をここで諦念したいと願ってしまうのではと思われるほど、しかしその景色と心は賞翫に値するもので、落ち着かないのは旅の楽しい証拠。
二〇を越えれば時間の早くなる老いを笑い草にすることが軽率に思われるほど喜ぼうとする旅の舞い上がりと冬の寒さ。
こんなにも苦痛に感じられる寒さ、明日からこうして過ごすことはできない。
笑えばからりと寒さを忘れるようで、怒ってみればずしりと寒さに与るようで、しんとして歩けばその寒さはなんて正しいのだろうと言い包められるようで、おかしかった。身体は痛い痛いと寒さを恨みそうだというのに、あなたを笑わそうとしたり、あなたに気付かせようとしたり、あなたに応えようとしたり、元気なものだった。
思春期とは体と心のズレだという文章を思い出し、今の私は思春期だと思い付き、おかしかった。生きるための本能が寒さに屈してしまわぬように感情を生んでいるようでもあり、そのためにあなたを不愉快にさせる稚拙な自分は滑稽でしか無いが、温情に恵まれたころにはまた感情を新たにしてしまっていた。
不安定さに不衛生なことの一つもなく、旅の疲れに自然とまどろむ目は、平和なもの。
未来を語る余裕が出るなり、真面目な口角に考えをまとめる指先。旅は時間の限りあることを無意識に確認させるらしく、もう少しそっとしてあげたら良いのにと思うなどする。するわりにどうも未来を約束したくなる。それを私は馬鹿馬鹿しいと思っても、話さなければそれまでだというのは、実際その通りだ。際限なく抱いて欲しい欲求。思春期とはいえ、大人だから上手に話せるでしょうとテンポを取り始める。それにはやはり寒さは邪魔だから、暖かい部屋で二人は寄り添わずに教え合いましょう。
温泉の情緒に撮り収められない景色、合わせて自分の佇まいを演出していく気持ちの易さと伝えきれない心慮。旅を終えたら一緒の思いになりたい、家が一番ね、ということ。